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宝塚歌劇100周年

最終更新日 2017年05月25日

展示期間 : 05月から06月

展示場所 : 本館一般展示


展示ポスター
 大阪梅田駅からマロン色の阪急電車に乗って30分余りすると、車窓に山並みが近づいてくる。左側の窓の外に眼を向けると、遠くに白壁に橙色の屋根を乗せた宝塚大劇場の建物が見え始める。このときファンならば早くも少し胸が高鳴るのを感じることだろう。駅を出るとそこは、遠方から観劇に訪れる人が親しみを込めて「ムラ」と呼ぶ歌劇の街である。駅前から続く花のみちが夢の舞台へと誘う。今年100周年を迎えた宝塚歌劇の初演は1914(大正3)年。鉄道会社の乗客誘致のため宝塚新温泉のアトラクションとして宝塚少女歌劇の第1回公演が行われたのが始まりだ。演目は桃太郎をもとにした「ドンブラコ」ほか2作で、室内プールを改装した劇場で公演され入場料は無料だったという。
 宝塚歌劇はいま、宝塚と東京日比谷に専用の劇場をもち、年間の観客250万人を数える劇団に発展した。また、未婚の女性だけで構成された世界でも稀にみる劇団である。2014(平成26)年4月5日には宝塚大劇場で100周年記念式典が行われた。

 時を同じくして催す今回の展示では宝塚歌劇にまつわる本や、創設者の小林一三(いちぞう)氏や氏が創業者である阪急電鉄についての本、また『ベルサイユのばら』をはじめとした演目の原作本を幅広く紹介します。観劇経験のある人はもちろん、ちょっと遠い世界だと感じていた人にも新しい扉を開く機会になればと思います。

展示関連情報

宝塚の歴史

大正から平成まで100年、戦争や震災という幾多の大きな困難を乗り越えてきた宝塚歌劇。激動の時代を生き抜いてきた劇団の歩みがわかる本をご紹介します。

『宝塚歌劇華麗なる100年』

朝日新聞出版/編 朝日新聞出版 2014年
朝日新聞の紙面でたどる宝塚歌劇100年史。榛名由梨、麻実れい、大地真央ら時代を代表するOGによる対談も載せられており時を重ねて行く宝塚の足音を肌で感じることができる。

『宝塚歌劇今昔物語』

橋本雅夫/著 小学館 2002年
90周年を目前に書かれた読みやすい宝塚入門書。筆者は阪急電鉄の前身となる鉄道会社を経て、宝塚歌劇団に出向し50年の長きに渡り関わりを持った。劇団を内側から見た橋本氏ならではの視点で記されるエピソードが楽しい。

『愛しのタカラヅカへ』

香村菊雄/著 神戸新聞出版センター 1984年
黎明期からベルサイユのばらの時代まで、宝塚の歴史を知るならこの一冊と言える本。なにしろ筆者は幼少時の1914(大正3)年、宝塚少女歌劇の初演「ドンブラコ」を実際に観劇しており、後年には宝塚で演出も務めている。激動の時代を生きぬく宝塚70年の歩みが手に取るように分かる。

『タカラジェンヌの太平洋戦争』

玉岡かおる/著 新潮社 2004年
2002(平成14)年のテレビドラマ「愛と青春の宝塚」でも描かれたが、第二次世界大戦は宝塚にも大きな爪跡を残した。公演演目は戦時色を反映したものとなり、ついに大劇場は閉鎖される。伝統の緑の袴からモンペ姿で軍需工場に向かう音楽学校生をはじめ、不遇の時代を生き抜く若き乙女の姿に胸を熱くする。

宝塚入門

宝塚に関する基礎知識が知りたいという人におすすめの入門書、宝塚の世界をより深く知りたいという人へ向けた基本書をご紹介します。

『宝塚 百年の夢』

植田紳爾/著 文藝春秋 2002年
「ベルサイユのばら」をはじめとする大ヒット作の演出で知られる前宝塚歌劇団理事長による宝塚入門。10数年前の本だが、黎明期からの宝塚の歴史が分かりやすく語られる。1995(平成7)年の阪神淡路大震災から宙組誕生前後の激動の時代を経て、100周年に向けた思いが演出家兼理事長の両者の眼で綴られ、興味深く読める。

『宝塚(ヅカ)読本』

中本千晶/著 バジリコ 2006年
「宝塚を知れば人生2倍楽しい!」を信条とする著者が書く、宝塚歌劇をやさしく学べる入門書。宝塚についての基礎知識や独自のオキテについての解説、「スター有望株」のチェック方法まで、初心者からコアなファンまで楽しく読める一冊。

『宝塚歌劇団スタディーズ』

江藤茂博/ほか編 戎光祥出版 2007年
元トップスターの日向薫らを講師に迎え、宝塚ファンの大学教員がはじめた宝塚歌劇講義。その人気講義からうまれた本書では、宝塚の歴史、システム、芸術性といった基本をわかりやすく解説する。小事典や出版物一覧、年表等の基本資料も収録した教科書的一冊。

宝塚スター

宝塚観劇最大の楽しみは、何といっても煌びやかなスターの輝き!宝塚スターの写真集やエッセイなど、様々な魅力が楽しめる本をご紹介します。

名鑑・写真集

『宝塚おとめ』

阪急コミュニケーションズ
毎年4月に発行される宝塚歌劇団の生徒(劇団員を宝塚ではこう呼ぶ)の名鑑でファン必携の本。全生徒の顔写真とプロフィールを専科・花・月・雪・星・宙の組別に紹介。観劇の前後に出演者の情報を確認するためにしばしば利用される。古い年版のものも当時の各組の状況を知るのに便利。

『宝塚 1994 夢と華』

菊地健志/写真 朝日ソノラマ 1995年
宝塚が80周年を迎えた1994(平成6)年の大劇場公演の写真集。90年代の宝塚はチケットを入手するのが最も難しいと言われた。花組のヤンミキ(安寿ミラ・真矢みき)、月組の天海祐希をはじめ4組に煌びやかなスターが揃う絢爛豪華な舞台が蘇える。このシリーズは宙組が誕生する1998(平成10)年まで続いた。

『忘れな君』

秋山庄太郎/著 阪急コミュニケーションズ 2004年
宝塚の機関誌「歌劇」の表紙を40年近くにわたり撮り続けた秋山氏の写真集。それは亡くなる直前に及ぶ氏のライフワークであった。語りかけてくるような数々のポートレートを見るたび、その煌びやかの舞台が目に浮かぶようだ。

『白薔薇のプリンス 春日野八千代グラフィティー』

宝塚歌劇編集部/編 阪急コミュニケーションズ 2013年
春日野八千代、この大スターを抜きに宝塚の歴史を語ることはできない。在団は80年を超えて多くの作品で主演、宝塚に咲く白バラと讃えられた。晩年まで舞台に立つその姿は神々しささえ感じさせた。劇団機関誌「歌劇」「宝塚グラフ」に掲載された写真をもとに稀代の名優の足跡を辿る。

スターのエピソード

『ベルばらと私』

榛名由梨ほか/著 アスコム 2005年
大人気マンガ『ベルサイユのばら』の舞台化は、「とにかく原作に似せろ」「目の中に星を飛ばせ」とムチャぶりの連続だった。長く愛されてきた宝塚の大人気演目「ベルばら」。初演から2000年代まで、人気作を演じてきたトップスターが語る裏話。

『宝塚物語』

葦原邦子/著 中原淳一/画 国書刊行会 1985年
中原淳一が創刊した雑誌「ひまわり」に1951年から連載された、「宝塚エピソード」十八編を収録。戦後を支えた宝塚トップスターたちの素顔を、物語風に描く。白薔薇のプリンスこと春日野八千代のケンカ武勇伝、おとなしそうな八千草薫の意地っ張りな一面等、意外なエピソードも楽しめる。

スターの本音

『真矢みき 願えばかなう!』

真矢みき/著 小学館 2008年
宝塚歌劇100周年夢の祭典では司会の大役を務めた真矢みき。現役時代は「宝塚の革命児」と呼ばれ、日本武道館でのコンサートを開催するなど絶大な人気を誇った。宝塚音楽学校入学時は成績下位だった彼女が、いかにして伝説のトップスターになれたのか。著者の言葉による夢をつかむための格言集。

『虹色の記憶』

岸香織/著 中央公論新社 2000年
在団40年、老人から子役まで何でも来いの名脇役の筆者。宝塚きっての文才が書く彼女の舞台人生はまさに抱腹絶倒。その場に実際にいるような内側から見た宝塚史ともなっている。

『わたしが泣くとき』

黒木瞳/著 幻冬舎 1994年
わずか入団2年目で娘役トップになるという、トップ就任最速記録を持つ黒木瞳。けれどもそのトップ就任には、多くの苦労が待っていた。相手役である大地真央との絆。宝塚同期生である親友との別れ。宝塚を目指して故郷を離れ、女優に転身して結婚するまで、人生の中で流してきた自身の涙の軌跡を振り返る。

『明日吹く風のために もっと遠くへ』

天海祐希/著 講談社 2001年
入団7年目という異例の速さで男役トップとなりながら、トップ就任わずか2年で退団した天海祐希。それでも「私は私なりに宝塚を愛してきた。」と語る彼女が、入団から退団までのその時々の率直な思いを綴る。天海祐希というスターの率直な人柄に魅かれる一冊。

『Aran』

安蘭けい/著 講談社 2011年
2006(平成18)年星組男役トップとなった安蘭けい。在日韓国人3世の彼女にとって、もうひとつの故郷韓国はコンプレックスであり、誇りとパワーの源でもあった。幼少時代、宝塚時代、退団後の今、自身のルーツを巡るフォトエッセイ。

小林一三と阪急電鉄

宝塚歌劇創設者の小林一三氏。ビジネスの天才と言われた氏の伝記や、氏が創業者である阪急電鉄に関する本をご紹介します。

『逸翁自叙伝』

小林一三/著 図書出版社 1990年
宝塚歌劇団はもとより阪急東宝グループの創始者小林一三氏の自伝。大阪経済界の創成期の混迷と変革の時代を力強く生き抜いた姿が心を打つ。後半で宝塚新温泉と宝塚少女歌劇の誕生の経緯を小林氏自身の言葉で語られていて興味深い。

『おもひつ記』

小林一三/著 阪急コミュニケーションズ 2008年
宝塚歌劇の機関誌「歌劇」の巻頭に小林一三氏が1946(昭和21)年から1957(昭和32)年まで連載した「おもひつ記」の全文を掲載する。終戦後の復興期から高度成長の前夜まで、宝塚を中心に日本の演劇界全体に贈る氏のエールの書。

『小林一三』

海野そら太/漫画 集英社 2013年
宝塚歌劇団の生みの親、小林一三氏の伝記漫画。住宅ローン、駅ビル、ビジネスホテル等、これらは全て一三が始めた事業。ビジネスの天才、小林一三の生涯を、子どもから大人までやさしく学べる一冊。

『宝塚戦略』

津金沢聡広/著 講談社 1991年
宝塚歌劇は阪急電鉄(当時は箕面有馬電気軌道)の沿線開発の一環として誕生した。阪急グループの創業者・小林一三は少女歌劇・博覧会の開催・日本初のターミナルデパート阪急百貨店の開業などを総合的に進めた。鉄道会社の枠にとどまらない、氏の目を見張るような先進性には驚かされる。

舞台と原作本

様々な作品を舞台化してきた宝塚。再演が少ないと言われる宝塚で再演を重ねている人気作「エリザベート」、「ベルサイユのばら」、「風と共に去りぬ」から、最近上演された作品まで、人気舞台の原作本をご紹介します。

『エリザベート 愛と死の輪舞(ロンド)』

ミヒャエル・クンツェ/原作 小池修一郎/著 角川書店 1996年
宝塚が日本初演となったミュージカル「エリザベート」のノベライズ。1996(平成8)年雪組初演の配役は主演のトートに一路真輝、エリザベートが花總まり。宝塚版では男役中心の劇団であるため、ウィーン版を変更して黄泉の帝王トートを主役に持ってきた。再演が幾度も繰り返される大ヒット作となった。

『ベルサイユのばら』

池田理代子/著
18世紀のフランスを舞台に革命に翻弄される人々の群像を描いた漫画作品。宝塚では1974(昭和49)年月組が初演、社会現象とも呼ばれた空前の大ブームを起こした。再演が重ねられまさに宝塚史上最大のヒット作である。しかし初演に至る道のりは険しく、漫画を舞台化することへの反対論や、登場人物のイメージを損なわないよう「目の中に星を飛ばす」名優長谷川一夫氏の演出など、数々の伝説的エピソードが残されている。

『風と共に去りぬ』

マーガレット・ミッチェル/著
南北戦争の時代のアメリカ南部、大農園主の娘スカーレットの半生を描く長編小説。ヴィヴィアン・リー主演の映画も大ヒットした。宝塚では1977(昭和52)年月組が初演後再演を重ねている。2013(平成25)年、大劇場本公演としては20年ぶりに宙組が上演した。初演当時は主役のレット・バトラーを演じた榛名由梨が、口ヒゲをつけるつけないで大きな話題となった。

『Shall we ダンス?』

周防正行/著 幻冬舎 1996年
1996(平成8)年に役所広司・草刈民代主演で公開された映画のノベライズ。2014(平成26)年1月、東京宝塚劇場の幕開けを飾ったのは雪組公演の「Shall we ダンス?」。物語の舞台を英国に移したほかは、映画が持つ雰囲気はそのままに宝塚流の脚色が巧みに施されていた。なお、小説はラストが映画とは異なっていて、これもまた味わい深い。

『ちいさこべ』

山本周五郎/著
江戸の大火で店や両親を失っても、火事による孤児を世話しながら懸命に生きる大工の若棟梁を描いた短編。「小さな花がひらいた」というタイトルで宝塚で舞台化されたほか、ドラマ化や漫画化もされた山本周五郎の感動作。ラインダンスや黒燕尾の影響で洋物作品の印象が強い宝塚だが、本作品のような日本物も伝統があり不動の人気を誇っている。

エトセトラ

宝塚を陰から支える人々の本、宝塚ファンの熱い思いが綴られた本、宝塚がモデルの小説等、宝塚の世界を様々な角度から楽しめる本、ウェブサイトをご紹介します。

宝塚の舞台裏

『愛と哀しみのルフラン』

岩谷時子/著 講談社 1982年
「恋のバカンス」や「君といつまでも」を作詞した岩谷時子が宝塚歌劇団にいたと言ったら意外だろうか。しかも男役でも女役でもなく出版部の編集部員として。後に同じ時期を宝塚で過ごした、不世出の歌手越路吹雪のマネージャーとして人生を共に歩んだ日々。二人の固い友情と越路吹雪へのレクイエムを描く一冊。

『Can you Dream? 夢を生きる』

植田景子/著 ソフトバンククリエイティブ 2010年
4回の不採用通知、一度は諦めた宝塚への夢。宝塚初の女性演出家植田景子が、夢を叶える道のり、宝塚という夢の舞台をつくっていく過程を綴ったエッセイ。企画、脚本、演出の舞台裏や、水夏希、大和悠河といったスタートのエピソードも語られる。

『プロジェクトX挑戦者たち 30』

NHKプロジェクトX制作班/編 日本放送出版協会 2006年
様々な分野で困難にぶつかりながらも挑戦し続ける人を追う、ドキュメンタリー番組の書籍化。「ベルサイユのばら・愛の逆転劇」として、観客数が落ち込んでいた時代に起死回生に向けて「ベルはら」が誕生した秘話が語られる。

『舞の道』

花柳芳次郎/著 阪急コミュニケーションズ 2007年
宝塚の大きな特色の1つは、日本物と呼ばれる演目のジャンルの存在である。飛鳥時代から江戸時代まで歴史上のエピソードを取り上げた芝居や、オーケストラの生演奏で着物姿で舞い踊るショーも上演される。日舞・花柳流の大名跡が所作や舞踊の指導を通じて長く宝塚と関わりを持つことで、逆に舞踊創作に大きな影響を受けた日々を語る。

『タカラジェンヌになろう!』

山内由紀美/著 青弓社 2013年
宝塚の舞台に立つには、宝塚音楽学校で2年間歌やダンス、演劇を勉強しなければならない。ここに入るのが20人に1人しか受からない難関で、3月の合格発表で涙を流す受験生の姿がメディアで報道されている。元タカラジェンヌの著者が、宝塚受験スクールで夢に向かって成長する少女たちの姿を描く。

宝塚ファンのヅカ愛!

『おお 宝塚!』

阪田寛夫/著 文芸春秋 1992年
童謡「サッちゃん」の作詞で知られる阪田氏は、元花組トップスター大浦みずきの父親である。大阪での少年時代から続く宝塚ファン歴は筋金入りで、娘へ、そして宝塚への愛情が行間から伝わってくるようだ。

『夢の菓子をたべて わが愛の宝塚』

田辺聖子/著 講談社 1983年
作家田辺聖子は子どもの頃からの宝塚ファン。後には『新源氏物語』など幾つかの作品がその舞台で上演されている。この本は出版されたのが30年前と古いが、宝塚をこよなく愛する田辺氏の手になるだけに、出色でしかも分かりやすい宝塚入門書となっている。

『手塚治虫のふるさと・宝塚』

河内厚郎/編著 神戸新聞総合出版センター 1996年
宝塚大劇場から歩いて数分で手塚治虫記念館の前に出る。手塚は5歳から24歳までを宝塚で過ごした。母の手に引かれ観劇し、また自然豊かな宝塚での日々は、その後の人生と作品に大きな影響を与えた。宝塚歌劇も「火の鳥」や「ブラックジャック」などいくつかの手塚作品を上演している。

宝塚がモデル!?

『スミレ刑事の花咲く事件簿 知性の勝利』

石平ひかり/著 講談社 2010年
独身アラフォーの女刑事伊原すみれと、宝塚オタクの若手イケメン刑事光矢射斗のコンビが難事件に立ち向かうシリーズ(全4冊)。伊原はどことなく元雪組トップスター水夏希を彷彿とさせる。宝塚ファンが読めば思わずニヤッとするようなストーリーが満載。

『野ばら』

林真理子/著 文芸春秋 2004年
「私たちって、ずうっと不幸にならないような気がしない?」。宝塚娘役の千花と親友で編集者の萌。男に愛されることしか知らない、美しい2人の恋と迫る影。トップになるための駆け引きや、宝塚ならではのファンとの複雑な関係。宝塚の華やかな生活と厳しい現実が主人公の目を通して描かれる。